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2008年10月25日 (土)

よしたに氏

ダブルキャリアは誰でもできることではない。本業にエネルギーを取られ、毎日へとへとで帰宅するのであれば、もうひとつのキャリアを追いかける余力は生まれない。一方で本業に比較的、時間の余裕があったとしても、余暇を犠牲にしてまで追求したい何か、がなければ、仕事以外の時間は骨休めと単なる暇つぶしに終わってしまう。
 その点、よしたに氏の場合は違った。SEという激務の合間を縫って、自分がやりたかった夢を実現している。よしたに流ダブルキャリアの掟を考えてみよう。
 まずは「本業と副業を隣接させよ」ということだ。SEの仕事と生身の自分の生活がそのまま漫画のネタになるのだから、テーマは尽きないはずである。もちろん、何をどう切り取るか、については、大きな産みの苦しみがあるはずだということを急いで付け加えておく。
 ちなみに、『ぼく、オタリーマン。』第3巻の裏見返しには、今から約10年後、40歳を目前に脱サラし、農協で知合って結婚した妻と一緒に、鍬を片手に農業にいそしむオタリーマンの姿が描かれている。オタリーマンの次はオタファーマー(農民)だろうか。
 二つ目の掟は「仕事を省力化するツールを使え」。よしたに氏は、パソコンとネットをダブルキャリアの最大の武器にしている。詳細は連載第2回で触れられているが、よしたに氏の絵描きデビューは、ネットの隆盛なくしては語れない。ネットが作品の展示場であり、広告スペースであり、さらに言えば、オタリーマン産みの親の編集者との出会いを仲介してくれたのもネットだった。
 漫画やイラスト制作といった実働も、パソコンを頼りにしている。手描きのため、一日1、2枚しか仕上げられないプロの漫画家がいる中で、現在の氏は7、8枚も量産できるというから大したものだ。しかも、最近は「絵の緻密さに必ずしも拘らなくても勝負できる」ということがわかってきた。別の言葉で言えば、手の抜き方がわかってきた、ということである。こうした認識は、時間がどうしても限られてしまうダブルキャリアをうまく廻すには不可欠だろう。「力を抜くところを見極めよ」。これが3つ目の掟である。
 最後の掟は「会社では、ダブルキャリアの気配を消せ」。よしたに氏が現在の会社に入ったのは半ば偶然だったが、結果的にダブルキャリアに寛容な会社のようである。
 といっても、周囲にダブルキャリアをやっている人は数少ないそうだから、特別な会社ということではなく、よしたに氏の処し方がうまいので、会社も咎められない、ということなのだろう。自分から漫画や本のことは口に出さない、仕事上の固有名詞は絶対、作品中に登場させない、というルールを課している点は立派である。
 よしたに氏の活躍を知り、「組織にいろんな人がいることはいいことだ」と発言したという社長に、ぜひ話を聞いてみたいものだ。ダブルキャリアは組織のダイバシティを計る目安にもなり得る。

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